レポート

東京蚤の市に初めて行ってみた|雰囲気・楽しみ方・戦利品をリアルレポ

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「蚤の市」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか?

僕の頭の中ではずっと、ヨーロッパの石畳の上に並べられた古い銀器とか、おばあちゃんがやってる古道具屋のイメージでした。
要するに、自分とはそんなに関係のない、ちょっと上品な大人の世界。

ところがどっこい、ある春の週末。気づいたら立川の昭和記念公園で、両手に変なものを抱えながら芝生の上を歩き回っていたのです。

この記事は、「東京蚤の市、気になるけど自分が行って楽しめるのかわからない」という方に向けて、初参加した僕の正直な感想と、現地で気づいたことを書き残したものです。

この記事でわかること

  • 東京蚤の市の現地のリアルな雰囲気
  • 「蚤の市」のイメージと実際の差
  • 初めて行く人が知っておくと得すること(混雑・服装・現金まわり)
  • ふらっと行った僕が、最終的に何を連れて帰ってきたのか

そもそも「東京蚤の市」って何?(さくっと)

ざっくり言うと、全国の古道具屋・アンティークショップ・北欧雑貨店・古着屋などが、年に2回(春と秋)、立川の昭和記念公園に集結する一大マーケットです。
手紙社という会社が2012年から主催していて、今回(僕が行った回)で25回目を数える歴史あるイベント。

公式が「お買い物と体験とライブが融合した一大フェスティバル」と謳っているとおり、ただ古いものを売るだけじゃなくて、ライブステージあり、フードあり、ワークショップありの完全に「フェス」です。

出店者は約330組、来場者は数日間で約6万人規模。
来場者数もとても多く、全ブース回りきるのは中々大変でした。

詳しい開催情報や混雑回避のテクニックは公式サイトや既存の完全ガイド系記事に詳しいので、当日のロジは他に譲ります。
この記事では、「初めて行った素人が現地で何を感じたか」に全振りしていきます。

入場直後、いきなりオルガン演奏でテンションがアガる

会場に入ってすぐ、目の前に現れたのがこれです。

帽子をかぶった人がパイプオルガンっぽい木製の楽器を演奏している。よく見ると「TIP BOX」と書かれた箱が置いてあって、リクエスト曲が選べるらしい。料金は1曲1,000円から。

なんですか、これは。
蚤の市って、こういうのもアリなんですか。

事前情報で「ライブステージがある」とは聞いていたけど、まさか中世ヨーロッパの広場みたいなノリで個人がオルガンを演奏しているとは思わなかった。
会場全体が音楽に包まれていて、これだけで「ああ、ここは普通のマーケットじゃないな」と察するには十分でした。

ちなみに後で知ったんですが、これは「ストリートオルガン」とか「ハーディガーディ」みたいな伝統的な大道芸の流れで、東京蚤の市のお馴染みのパフォーマーらしいです。世界観の演出が異様に細かい。
イベント全体が「フェス」として作り込まれているのを、入場5分で思い知らされました。

ここから本格的にバグり始める展示物たち

会場を歩き出して5分。早くも「これは事前の心構えが足りなかった」と思い知らされる展示が次々と現れます。

1. 鍵付きショーケースの中の謎の小物群

ガラスのショーケースに、ヨーロッパっぽい古い小物がぎっしり詰まっている。香水瓶、小箱、カメオ、紙もの。
値札の数字に二度見してしまうような価格帯のものもあって、これがアンティークの世界の入口なのか、と背筋が伸びました。

ここで気づいたんですが、出店者さんの真剣度が違うんですよ。
「適当に古いものを並べて売る」のではなく、「世界観を切り出して持ってきている」という感じ。
フランスの蚤の市で買い付けてきた人、東欧をめぐった人、それぞれが自分の旗を立てて出店している。

2. リキテンスタイン風のポップアートが並ぶブース

ほかのブースもめぐっていると、女の子のポップなイラストの額装ポスターが大量に吊るされたブースが目に飛び込んできました。
リキテンスタインっぽい、コミック調のあれ。

なんで蚤の市にポップアート? と思うけど、出店ジャンルの幅が広すぎて、もう何でもアリです。
「古いもの」の定義が、僕の頭の中の「江戸時代の壺」から「ミッドセンチュリーのポスター」までいっぺんに拡張されていく感覚。

3. 義眼

来ました。たぶんこの記事を読んでいる人の半分くらいは、ここで「えっ」となるやつ。

義眼です。ガラスの。たぶん本物の。

ショーケースの中に整然と並べられた、いろんな色合いの瞳。何十個もあります。横には「Don’t Touch!」の貼り紙。
そりゃそうだ、触らないよ。触りたくもないよ。

でも、なんていうか、すごい。「こういうのも蚤の市に流れてくるんだ」と。
19世紀ヨーロッパの医療用とか、人形用とかなんでしょうけど、もはやアンティークというより博物館の標本展示です。

実はこの「ちょっとダーク寄りの蒐集物」を扱うジャンルは、アンティークの世界では「キャビネット・オブ・キュリオシティ(驚異の部屋)」と呼ばれていて、れっきとした文化があるそうです。
骨格標本、剥製、医療器具、宗教遺物などがこれにあたります。

僕は買いませんでした(当たり前)。
でも、ほかのブースにあった蝶々の標本箱は普通に綺麗で、世の中の趣味って広いんだなと改めて思いました。

ちなみに、こういう作家ものの新作もちょこちょこ並んでいます。
これは陶器でできた小さな家のオブジェ。
蚤の市は「古いもの」だけじゃなくて、作家ものも一緒に並んでいるので、ジャンル感がカオスです。

お皿を求める人の気持ちが、ちょっとわかった

正直に言うと、僕は「お皿を集める人」の気持ちが今まで全然わかりませんでした。

家にあるお皿は無印で揃えた白い丸皿が10枚。それで全然困ってない。むしろ食洗機にきれいに収まって最高、くらいに思っていた。

でも蚤の市を歩いていると、その考えが少しずつ揺らいできます。

例えばこの、グラデーションが美しい青いお皿たち。光の入り方で表情が変わる釉薬の感じが、めちゃくちゃ良い。1枚1,000〜3,000円くらいで売っているのが信じられないクオリティで、思わず足が止まりました。

たぶん北欧好きの人たちが熱心にお皿を集めるのって、「食卓に物語を持ち込みたい」みたいな感覚なんでしょうね。毎日使うものに、誰かが手で作った時間が宿っているのは、たしかに豊かだ。

…と、心がぐらついたんですが、僕の場合はそもそも一人暮らしで家でほぼ料理しないので、買っても飾りになるだけだと我に返り、すんでのところで踏みとどまりました。あぶない。

ちなみにこの「うつわ系」のブースは、開場直後にめちゃくちゃ混むそうです。
北欧ヴィンテージ(アラビア、イッタラ、リサ・ラーソンとか)を狙っている人は、本気で朝イチで並ばないと売り切れます。これは現地で何人かの常連さんから聞いた情報。

用途不明の物体に、心を持っていかれる

蚤の市の何が一番ヤバいって、「これ何に使うの?」というものが、何にも使えないのに猛烈に欲しくなる現象です。

例として、これを見てください。

水道のバルブのハンドル部分。1個300円。
工場の配管から外したやつでしょうね、たぶん。錆びてるし、塗装はあちこち剥げてる。

…欲しい。

なんで? と聞かれても困るんですが、なんかこの「役目を終えた工業部品の質感」にめちゃくちゃ惹かれる。家に飾っても置き場所がない、飾る理由もない。なのに、ずっと眺めていられる。

これは、エンジニアという仕事柄、機械的なものに惹かれる癖があるからかもしれません。CNCで削られた金属の質感、長年使われて摩耗した表面、機能美。新品にはない情報量が、古い工業部品には宿っている。

こっちの古い圧力計シリーズも、危険でした。文字盤の経年変化、針の角度、真鍮の継手の質感。「いつか自作PCのケースとかに組み込んでみたい」みたいな邪念がムクムクと湧いてきます。

このへんに至っては、もはや「これ何?」ですらない。古い廃材と金属部品でアートピース風にアセンブルされたオブジェ。値札を見て、何度も二度見しました。

蚤の市にはこういう、「文脈を読み解かないと価値がわからないが、わかると沼」な領域がたしかにあって、ハマる人がハマる理由がよくわかります。

ちなみにフィルムカメラのブースも普通にありました。AIRESFLEX、Yashica Rookie、WALZFLEX。完全に「動くかどうか」よりも「持ってるだけで気分が上がるか」で選ぶ世界です。ガジェット好きとしてはこっちにも心が揺れまくりました。

食べ物まわりの破壊力

ここでちょっと小休憩。
蚤の市はモノを見るだけじゃなくて、食べ物の屋台もかなり充実しています。

例えば「成城・城田工房」さん。
看板には「うずまきちゃん 1,000円」と「スモークチキン 800円」。
うずまきちゃんって何だよ、と思いますよね。

うずまき状のソーセージでした。

しかもデカい。手のひらサイズある。これを串で持ってかぶりつくスタイル。

正直に言うと、これは見た目のインパクトに完全にやられて買いました。
本当は1個1,000円のスナックって割と高いんですけど、蚤の市の中だと「まあそんなもんかな」という気分になってしまう。会場マジック。

味は普通に美味しかったです。ジューシーで肉肉しい。
ただ、これを写真に撮らずに食べるのは、たぶん罪です。

そして食後のデザートには、いちごのアイスクリーム的なやつ。
クッキーのクランブルと、メレンゲみたいな飾りがのっていて、これも完成度が高い。

蚤の市は古いものを買いに来る場所のはずなのに、フードの満足度が異様に高くて困ります。なんなんだこのイベントは。

危険な予感:アナログガジェットにハマりそう

お腹を満たして、もう一周歩き始めたときに、決定的な出会いがありました。

ラジカセとカセットテープのブースです。

赤いSONYのラジカセ、「my first Sony」のキッズ向けボックス、見たことのないインディーバンドのジャケット、Red Hot Chili Peppersのカセット。
僕が一度も通ってない時代のカルチャーが、当時のままパッキングされて並んでいるのを見て、足が止まりました。

ここで気づいてしまったのです。

僕、最近、明らかにアナログガジェットに惹かれ始めてる。

普段の僕は完全に「最新ガジェットを追いかける側の人間」です。MacBookは出るたびに買い替えを検討するし、iPhoneは新型のスペックシートをワクワクしながら眺めるし、新しいキーボードが出ればレビューを漁る。
「速い」「軽い」「便利」が正義の世界で生きています。

でも、ここ最近、なぜか自分の中に逆方向のベクトルが芽生えてきている。

例えば、フィルムカメラ。完全にデジカメで困ってないのに、なぜか「いつかフィルムで撮ってみたいな」と思っている自分がいる。
例えば、レコード。Spotifyで聞けば一瞬なのに、わざわざ円盤に針を落としたくなる気持ちが、ちょっとわかる気がする。

そして今、目の前のラジカセ。

「再生ボタンを押す」という物理的な行為と、テープが回り始める時間差、「巻き戻し」という今のサブスクには存在しない動作、「A面/B面」というアルバム構造、ジャケット込みで楽しむ作品との向き合い方。
これ、デジタルの便利さで全部省略された要素だけど、省略したからこそ無くなった豊かさでもある。

このブースは、結局買わずに後にしました。
今買っても部屋に置く余裕がないし、再生機材も持ってない。
でも、「いつか自分の机にカセットプレイヤーを置く」というイメージが、頭の中にしっかり残ってしまいました。

蚤の市、恐ろしい場所です。「いつか欲しいもの」のリストを、強制的に増やしてくる。

アンティークに対して、ちょっと考えたこと

僕はずっと「新しいもの好き」「最新ガジェットに目がない」エンジニアタイプの人間だったので、アンティーク的なものとは縁遠いと思っていました。
MacBookは最新のものに買い替えたばかりだし、ガジェットは新作が出るたびにそわそわする。

でも、蚤の市に来てみて、アンティークの何が人を惹きつけるのかが、少しだけ言語化できた気がします。

新品には「これから何が起こるかわからない期待」があって、古いものには「すでに何かが起こった痕跡」がある。

人によって、どっちに価値を感じるかは違う。
でも、両方あるからいいんですよね。一日中ピカピカのものに囲まれて過ごす生活も、たまには誰かの時間を引き継いだものに触れたほうがバランスが取れる。

そう考えると、蚤の市って、現代人にとって「速度を緩めるための装置」としても機能してるのかもしれません。
スマホで効率を最大化する日常に、わざわざ「用途不明の何か」を持ち込むことで、生活にノイズを与える。そのノイズが、たぶん豊かさにつながっている。

…まあ、買い物中はそんなこと考えてなくて、ただ「うわっ、これ良い」「これも気になる」を連発していただけなんですけど。

そして、ついに連れて帰った戦利品

さて、お待たせしました。

たくさんの誘惑を「金額」「持ち帰れるサイズか」「家で持て余さないか」というフィルターでなんとかかわし続けていた僕ですが、最終的に1点だけ、抗えなかったものがあります。

これです。

真鍮製の「押」プレートです。

…はい。

「押」です。

たぶんガラス扉とか自動ドアじゃない時代の押し開きのドアに付いてた銘板ですよね。表面の「押」の文字が漢字で、墨で塗られたっぽい黒のコントラストが効いている。四隅にネジ穴が4つ、しっかり穿たれていて、実用品として現役だったことがわかる。

サイズは手のひらに収まるくらい。重量感のある真鍮。経年で角が削れて、いい味になっている。

価格は伏せますが、戦利品としては破格でした。

何に使うの? と聞かれると、何にも使えません。
飾っても「押」だし、机に置いても「押」。ただ、机の上にあるだけで、なぜか視界の端で存在感を放ち続けている。

たぶん、これが蚤の市での「正しい出会い方」なんでしょうね。
用途じゃなくて、引っかかりで選ぶ。

初めて行く人に伝えたい、現地で気づいた5つのこと

ここまでテンションだけで書いてきたので、最後に実用的な情報も少しだけ。

1. 現金は多めに、千円札を意識して

クレカやPaypayOKのお店もありますが、現金のみのお店が多かったです。
あと、消費税で半端な額になるお店もあるので、千円札・小銭を意識して用意しておくとスムーズです。

2. エコバッグはあったほうがいい

買ったものを入れる袋を用意してないお店、けっこうあります。
重いものと軽いもの、汚れていいもの良くないものを分けたいので、複数あると便利。アンティークは脆いものも多いので、できればクッション材になる手ぬぐいとかも一緒に。

3. 服装はとにかく動きやすく

会場は芝生と砂利。スニーカー必須です。
あと春・秋とはいえ日差しが強い日もあるので、帽子と日焼け止めも。日陰が少ない場所も多いので、暑さ対策を真面目にしたほうがいいです。

4. お目当てがあるなら朝イチ、ふらっと見るなら午後

これは王道のアドバイスですが、本当に北欧ヴィンテージや人気のうつわは午前中に売れます。ただし、ふらふらと雰囲気を楽しみたいだけなら、午後のほうが混雑がマシで、ゆっくり見られます。僕は完全に後者でした。

5. 「これ何?」と思ったものは、店主さんに聞こう

蚤の市の最高に楽しい瞬間は、店主さんがそのモノの来歴を語ってくれる時です。「これ、戦前の〜」「これは元々〜だったんですけど」みたいな話が、無料で聞けます。
買わなくても聞いていいんです、たぶん。

まとめ:初めての蚤の市は、想像の3倍カオスだった

最初、僕は蚤の市を「上品な大人の世界」だと思って行きました。
帰ってきた今は、「全国の変なモノ好きが、本気で世界観をぶつけ合うフェス」だと思っています。

ガラスケースの中の義眼、工場から外されたバルブハンドル、用途不明の真鍮プレート。こんなものが普通に並んでいる場所、他にあります?

そして不思議なことに、ここで連れて帰った「用途不明の何か」が、机の上に置かれているだけで、なぜか日々の生活のノイズになって、ちょっと豊かになる。

机の上で今も無言で「押」と主張しているこのプレートが、その証拠です。

東京蚤の市は、年に2回(春・秋)に開催されています。

「行こうかどうか迷ってる」という方には、ぜひ一度行ってみてほしいというのが正直な感想です。古いものに興味がなくても、フェスとして楽しめる作り込みなので、たぶん何かしら持ち帰れるものがあるはず。

たぶん、誰の机にも、「変なモノ」が置かれる余白はあるはずです。

【関連リンク(参考)】

  • 東京蚤の市 公式サイト: https://tokyonominoichi.com/
  • 開催場所: 国営昭和記念公園 みどりの文化ゾーン ゆめひろば
  • 開催時期: 年2回(春・秋)
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